ブラッシカ・ラパ

堅い仕事とやわらか脳内。

「やっぱりさ、ちょっといい話風にしたいよねぇ」「教育論の比喩的な?」-九井諒子『ひきだしにテラリウム』

私も『ダンジョン飯』で九井諒子という作者を知ったので、

このマンガがすごい!に選ばれる前から知ってたもーん」などという偉そうな顔は出来ないが、それでもこの人はすごい、と思ったし全ての単行本を買い集めるきっかけになるぐらい面白かった。

 

ひきだしにテラリウム
 

 

ショートショートといえば星新一、だと思っていたよ。そんな掌編形式の漫画。

200p強のコミックにどっさり33個も短編漫画が入っていてなんだかお得。。

 

 

正直、それぞれの話が長くても8ページほどと文で紹介しづらい(するまでもない)のでいくつかの好きなお話を。。

 

『代理裁判』

人間関係がこじれると脳内で裁判を開いてしまう女性の話。真木よう子が出てた『脳内ポイズンベリー』的な。見てないけど。

 

 

その日原告が持ち寄った物はサルミアッキという菓子だと聞きました、サルミアッキといえば世界一まずい飴と有名です。被告が手をつけなかったのも不自然ではない

 

本筋には関係ないけど好きな部分。サルミアッキってあの黒いゴムみたいな人間の食べものに見えないやつか…

 

「バイトの後輩に嫌われているのでは事件」の判決やいかに。。

 

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『えぐちみ代このスットコ訪問記 トーワ国編』

これは本当に漫画ならではの表現だと思う。架空の漫画家「えぐちみ代子」さんが架空の国「トーワ国」に行ってきましたよ、という体の架空のコミックエッセイ。

 

ダーリンは外国人』とかけらえいこさんのエッセイとか、そのへんを一度でも読んだことある人ならあるあるうううぅぅーーって言いたくなるぐらいコミックエッセイの「お約束」をしっかり抑えているのがすごい。

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「編集N澤さん」の破壊力。。あるあるぅー!!

 

 

 

『遠き理想郷』

では来月の小中学校交流会でのクラスの出し物は、いじめ・迫害・差別ってな~に?をテーマに紙芝居をやりまーす

そんなよくある授業風景をきっかけに、女子達の考え出した『うさぎ人とねずみ人』の紙芝居が、ディテールを大事にし過ぎる余り&白熱する議論によってものすごい生々しくなっていってしまう話。こういうシュールなの大好きです。

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途中のコマ。まだまだこれから過激化していき、うさぎ人の王様バニージョ四世が凶弾に倒れその短い治世を終えたり、奴隷制度がりす国の人道的介入によって廃止されたりアニマルランドの醜い日々は続くのであった。

 

 

 

もともと九井さんのweb連載や同人誌を単行本で再編したものなので、なんとwebでいくつかの話が読める!太っ腹!

matogrosso.jp

 

私はこの試し読みの『ショートショートの主人公』で購入を決めました。

これからさらに人気が高まるであろう『ダンジョン飯』が気に入った方はぜひ次の一冊としてどうぞ。玄人面できるぞ。